アルバムの家

著者
女性建築技術者の会
出版年月
2006年11月
出版社
三省堂
ISBN-10
4385362734
ISBN-13
978-4385362731
定価
1,890円

女性建築家たちが 自分の育った家と暮らしを
みずみずしい感性でつづった33の家物語。
北海道から九州まで 全部間取り図付き。

目次

●本書に出てくる言葉のアルバム…500語 

(家の所在地の現在の地名)・執筆者名の順
天然のステンドグラス      北海道旭川市        ・島田 眞弓
豆ごはんを蒸かす甘い匂い    青森県青森市        ・葛西 和子
映画さ、えがねが?     秋田県由利本荘市    ・福井 綾子
りんごの家          長野県下伊那郡        ・大平 幸子
ベランダとお父さん       群馬県前橋市        ・中林美知子
ネズミの運動会         群馬県前橋市        ・新見美枝子
がんこな祖父、権三郎      群馬県太田市        ・糸井あさ美
ツバメのお宿          栃木県佐野市        ・羽沢 昌子
前のうちは良かったね      埼玉県所沢市        ・越阪部幸子
今日はおでかけ!      埼玉県さいたま市    ・岡部 千里
汲み取り屋様がお見えになった  東京都目黒区        ・渡会 有子
タンスでご飯           東京都港区    ・東 由美子
だだっ広い廊下         東京都大田区        ・古村 伸子
掘りゴタツでラジオを聴いていた  東京都新宿区        ・菊池 邦子
歩いて5歩の田舎        東京都葛飾区        ・金井江理子
官舎も学校もできたてほやほや  東京都小平市        ・杉山 経子
帰りたい家はどこ?      神奈川県横浜市        ・今井 淳子
亭主関白の家         神奈川県二宮町        ・浜田 幾惠
魚屋の暮らし         神奈川県平塚市        ・岸  英子
おかーちゃんは?         千葉県柏市     ・岡村由紀惠
男尊女卑の家          千葉県千葉市        ・松崎志津子
父の藤棚            千葉県千葉市        ・森  聖子
団地は私のパラダイス      千葉県船橋市        ・戸川 理子
わが家は人の通り道       静岡県静岡市        ・小渡佳代子
初代三角敷地の家        石川県金沢市        ・勝見 紀子
めがおじいさんとまやのある家  島根県雲南市        ・松井真由子
ワクワクよその家探検     兵庫県西宮市他        ・田中 洋子
なんでも母の手作りだった    三重県松阪市        ・鈴木 久子
チイちゃーん、ご飯よー    和歌山県田辺市    ・加部千賀子
いつも大勢が同居していた    香川県高松市        ・大宇根成子
瀬戸内海のみかんの家      愛媛県今治市        ・説田 仁子
紅いハンカチ          福岡県八女市        ・矢賀部雅子
うちのお風呂はゴエモン!    宮崎県延岡市        ・廣田 文子

はしがき

「ワンルームにしてください。」

マンションのリフォームを頼まれた時の話です。

夫婦と子ども4人の6人家族なのにワンルーム? とびっくりしたのですが、よくよく話を聞くと、持ち物も少なく、設備もシンプルに、生活も簡素にしたいということです。

日頃、過剰装備に疑問を感じていた頃だったので、意気投合して、そぎ落とせるだけそぎ落としました。これでいいんだ! と新しい解答が出た感じです。

それでも心配になり、家族に聞いてみました。

一番下の中1の男の子は「ぼくのプライバシーは机の引き出し1つかな?」、高1の次女は「ハンモックを吊るすから大丈夫」と言い、高3の男の子は1人になりたい時は外に出るとか。お母さんは何もないと掃除もしやすいと言い、お父さんは寝ちゃえばわからないしと、全くユニークな家族です。

出来上がった間取りは、昔懐かしい「田の字型プラン」。そういえば私たちが育った家も、襖や障子などを外せば、あけっ放しのワンルームだったことに気づかされました。

人と人とが肩寄せ合っていたあの頃のシンプルな家と暮らしを書き留めておこうと、建築の仕事に携わる私たちが、子どもの頃の記憶を呼び起こしてみました。

この本には、北海道から九州まで33の家物語があります。各々のタイトルの後に当時の家の所在地を記しました。33人は昭和15年~42年生まれですから、この本に書かれた時代は、昭和20年代~50年代、ちょうど昭和の後半の30年間に当たります。

この本を書くにあたっては、思いっきり10歳の子どもに戻ってみました。心に刻まれていてすぐ思い出せた事柄から記憶の糸をたぐり寄せていくと、隠れていたり、押し込められ押しつぶされていた場面が、その時感じた思いと共にだんだん鮮明によみがえってきました。最初は間取り図からたどりましたが、住宅に関わる事柄だけに収まりきれず、どんどん広がってゆき、「こころ」の旅となりました。

「過去って古臭いわ」なんて最初は思っていましたが、いやいやどうして、未来につながる旅の始まりでもありました。懐かしい昔を思い出すというよりもむしろ、今の自分自身を見直すことになり、新鮮な発見がありました。

皆さんも一緒に子どもの頃に戻って、ひととき「記憶の中の住まい」への時間旅行を楽しんでみてください。忘れていた宝物が見つかるかもしれません。

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